脳性麻痺における臼蓋の成長と骨盤骨切り術の必要性

 日本では、筋解離術のみ行う施設や大腿骨骨切り術は行うが、骨盤骨切り術は行わない施設が多いようです。脳性麻痺の外科治療が進んだ国やボバース記念病院では、必要に応じて積極的に骨盤骨切り術を行なっています。

 大腿骨骨切り術と同様に、骨盤骨切り術にも必要とされる理由があります。上の図の左のグラフを見てみると、GMFCS IIだけ、臼蓋の深さが年齢とともに深くなっていることがわかりますが、GMFCS III〜Vでは、臼蓋の深さは年齢が上がってもほとんど変化していません。右のグラフは正常な臼蓋の発育を示したものですが、そこにGMFCS III〜Vの臼蓋の深さ(水色の帯)を重ねてみました。水色の帯は赤ちゃんの臼蓋の深さと重なっており、正常では、年齢とともにどんどん臼蓋が深く成長し、水色の帯から離れていきます。大腿骨と同じように、臼蓋(骨盤側のくぼみ)も脳性麻痺患者さんでは、うまく発育しないことが証明されています。

 大腿骨骨切り術だけで、きちんと整復される場合は、筋解離術と大腿骨骨切り術を行えば良いのですが、臼蓋形成不全も改善しないと完全に整復できない症例は多いです。現代の日本で問題なのは、筋解離術や大腿骨骨切り術だけを行なって、うまくいかなくても、そのまま放置していることです。そういったケースでは、最初の手術から骨盤骨切り術を併用すべきかもしれませんが、再発した後でも再手術はできます。手術や入院は大変ですが、もう1回頑張れば、治せます。