麻痺性股関節脱臼の保存療法

 定期検診を行っていると、まだ手術が必要ではないが、股関節が亜脱臼しつつある状態が見つかります。手術を回避するために、できる限りのことをしたいです。残念ながら、強いエビデンスのある保存療法は少ないのですが、以下の治療は股関節を良い方向に導いてくれる可能性があると考えます。

 1、リハビリテーション:内転筋や腸腰筋、ハムストリングスの緊張が強かったり、筋腱が短縮すると、脱臼が進行しやすいです。ストレッチを行い、股関節の可動域を広く保つことや筋緊張を和らげることは股関節にとって良いことです。股関節がしっかり整復された状態であれば、荷重運動も股関節の発育によいので、歩行器や立位台を取り入れることも有効であると考えます。

 2、装具療法:外転装具を使用することで、股関節をしっかりと整復された状態に維持できることが多いです。外転装具を導入する場合、外転装具で股関節を良い状態に維持する時間と筋力増強のために運動する時間、股関節の可動域を保つためのストレッチの時間をバランスよく計画する必要があります。一般的に、装具療法では、1日8時間以上の装具装着で治療効果が得られるとされています。外転位を保つという意味では、車椅子や座位保持装置の座面を工夫してもよいですし、立位台の姿勢も股関節外転位にすることで装具と同じような効果が得られると思います。

 3、ボツリヌス治療:内転筋や腸腰筋、ハムストリングスの筋緊張が強いと股関節が脱臼しやすくなります。ボツリヌス治療はこれらの筋肉の緊張を和らげる効果があります。リハビリテーションや装具療法とボツリヌス治療を組み合わせることで、股関節に良い効果が期待できます。

 (今後、さらに、エビデンスのあるデータを追加記載していく予定です。)