臼蓋形成不全とソルター手術

股関節脱臼の患者さんの多くに、臼蓋形成不全が見られます。臼蓋形成不全とは、股関節の骨盤側の受け皿(屋根)が浅い状態です。臼蓋形成不全があると、体重を受ける面積が少なくなってしまうので、将来軟骨が傷んで、変形性股関節症になりやすいことが分かっています。

股関節脱臼の治療後、きちんと経過観察をして、臼蓋形成不全の状態をチェックする必要があります。多くの患者さんの臼蓋形成不全は徐々に改善していき、正常な状態になります。しかし、一部の患者さんでは、臼蓋形成不全が改善しない場合があります。5~7歳までに、臼蓋形成不全が改善しない場合、寛骨臼移動術(臼蓋を作る手術)が必要になります。もっとも一般的な寛骨臼移動術が、ソルター手術です。必要に応じて、ソルター手術を行うことで、大人になっても問題のない股関節になります。

ソルター手術を行うためには、入院と全身麻酔が必要です。当院では、手術前日に入院し、手術後1週間程度で一時退院できます。約1ヶ月間、胴から足首までギプスを巻きますので、一時退院はギプスを巻いたままになります。ギプスを巻いた状態での帰宅が難しい場合、ずっと入院しておくことも可能です。一時退院された場合、ギプスを外すときに再入院となります。ギプスを外したら、股関節を動かすリハビリや座る練習をします。3~5日の訓練で退院できます。手術後10週間経ったら、歩くことを許可します。歩く練習はご自宅でご家族と行うことになりますが、すぐに歩けるようになります。入院されている場合は、毎日リハビリを行います。運動を許可するのは、手術後4ヶ月くらいの時期ですが、経過によって若干前後します。骨切りした部分を固定するために、金属製のピンを入れているので、それを抜去する手術を手術後6~12ヶ月頃に行います。抜去する時の入院は2泊3日です。

臼蓋形成不全があっても、ソルター手術を行わない考え方もあります。放置すればどうなるのでしょうか?

全員ではありませんが、股関節に痛みが出てきます。その時期は個々に違いますが、運動部に入っている子などでは中学や高校で痛みが出てくることがあります。女性に多い病気ですので、妊娠中や出産後に痛みが出ることが多いです。体への負担は、人生の大事な時期に増えるので、痛くなって欲しくないときに痛くなることが多いです。だから、私たちは子供のうちに手術をしておくことを勧めます。

ボバース記念病院でのソルター骨盤骨切り術の成績をまとめていこうと思います。これから手術を受けられる患者さんの参考になれば幸いです。