麻痺性股関節脱臼

No child with CP was actually helped by having a dislocated hip.

(股関節が脱臼していれば、脳性麻痺患者さんが本当の意味で救われることはない。)

アメリカの有名な小児整形外科テキストの脳性麻痺の章に記載されている言葉です。脳性麻痺患者さんに成人期まで関わっていると、この言葉の正しさを実感します。海外を見ると、成人期に股関節が脱臼している患者さんをゼロにしようという方針で治療している国が増えています。他方、日本では、かかりつけの先生から、痛くなったら手術しましょうと言われていますという言葉をよく聞きます。しかし、麻痺性股関節脱臼はジワジワと進行するので、完全に脱臼しても痛みが無いことが多いです。脱臼した状態が長く続き、大腿骨頭の軟骨が破壊されたり、変形が進んでくると、痛みが起こります。痛みが起こってから治療をしても完治することが難しい場合が多いです。

脳性麻痺を始めとした体幹や下肢に麻痺が起こる疾患では、筋緊張が強い状態や筋力のアンバランスな状態から股関節脱臼が起こりやすいです。これを麻痺性股関節脱臼と呼びます。二分脊椎など弛緩性麻痺に起こる股関節脱臼は、痙性麻痺に起こる股関節脱臼と病態が違い、治療方法も若干違いますから、ここでは脳性麻痺に起こる股関節脱臼を中心に記載します。

定期検診を行い、適切なタイミングで、適切な治療を行うために、麻痺性股関節脱臼について解説します。

1、麻痺性股関節脱臼の発生率

2、麻痺性股関節脱臼の痛み

3、股関節の定期検診

4、麻痺性股関節脱臼の保存療法

5、筋解離術の適応と限界

6、脳性麻痺における大腿骨の成長と大腿骨内反骨切り術の必要性

7、脳性麻痺における臼蓋の成長と骨盤骨切り術の必要性

8、骨盤・大腿骨同時骨切り術の治療成績

9、Guided Growth(スクリュー1本で脱臼を治す治療)のエビデンス

補足:用語解説